あるところに味にこだわるまんじゅう屋がいました。「曽根屋」というまんじゅう屋です。あんこの味は甘すぎず、量は多すぎず、絶妙のバランスなんです。当然街中で人気でした。 同じ街に、もう一軒まんじゅう屋ができました。「りんご屋」というお店です。もともとパソコンを作っていた人が脱サラしてまんじゅう屋を始めたのだそうです。 「あんな素人に負けるわけがない」とたかをくくっていた曽根屋の主人でしたが、りんご屋は次々と新しいタイプの和菓子を作ってきました。特に「ぽっどまん」シリーズは人気で、一口サイズの「ナノまん」は大ヒットとなりました。いつの間にか曽根屋のまんじゅうがそれほど売れなくなっていました。後発のまんじゅう屋に客を取られたのでした。 りんご屋は新しく「スマホケーキ」というまで作ってきました。ケーキの中にあんこが入っているんです。「なんだよ、和菓子屋のくせにケーキまで作りやがって。あんこの味では勝てないので、どんどん変わったものを作りやがる。あんなの絶対売れないよ」と曽根屋の主人は思いました。 ところがスマホケーキは大人気になりました。あまりの人気でりんご屋のほかの商品まで売れなくなりました。またりんご屋が新しい「ぽっどまん」を開発中といううわさが流れ、新商品が出るまで買い控えるお客も出てきました。 スマホケーキの人気とぽっどまんの買い控えで、りんご屋のまんじゅうの売り上げが落ちました。まんじゅうだけの売り上げを比較すると、曽根屋のまんじゅうのほうが今月は多く売れたそうです。感想を聞かれた曽根屋の主人は「あんこの味にこだわってきたのがよかったんだと思います」と答えました。 めでたし、めでたし。